情報・エレクトロニクス系部門

ナノプロービング技術

  • (7) エネルギーをみんなに そしてクリーンに

  • (9) 産業と技術革新の基盤をつくろう

研究室概要

走査型トンネル顕微鏡(STM)や原子間力顕微鏡(AFM)などの走査プローブ顕微鏡(SPM)技術を駆使して、微結晶系太陽電池材料を含む様々な材料系におけるナノメートル領域での物性を解明することを目指しています。走査プローブ系と電気/光学計測システムを複合化した各種ナノプローブ技術の構築や、それらによるナノ構造の電気的・光学的物性の解明に関する最近の研究成果を展示します。

担当教員 / 研究室
高橋 琢二
開催場所

6月7日(金)

Ee棟 3階:Ee305

6月8日(土)

Ee棟 3階:Ee305

■ 太陽電池の多角的評価

試料の局所的な表面電位を計測できるケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)を改良して光照射下で動作する測定系を構築し、正確かつ局所的な光起電力測定を実現しています。この手法を適用することにより、多結晶シリコン系やCu(InGa)Se2[CIGS]などの化合物半導体系の太陽電池材料について、それらの光起電力特性や少数キャリアの寿命、拡散長、移動度などの諸物性を多角的に評価する研究を進めています。特に、CIGS系材料は、太陽電池材料としての高いポテンシャルが確認されている一方で、μm径程度の微結晶の集合体であるために、その結晶粒界の振る舞いなどの材料的な物性には未解明な点が多く残されており、ナノプローブによる局所的な計測によってその物性を解明することで、さらなる特性の改善への道を拓くことを目指しています。

■ 新規ナノプローブ手法の開発

ナノプローブ系では、非常に高い空間分解能が達成されている反面、通常はプローブの位置を常にフィードバック制御し続ける必要があるため、その動作速度が遅く、観測のスループットが低いという欠点を持っています。このような欠点を克服して高速な画像獲得を可能にするために、探針の変位量をサンプル・ホールド回路によって逐次取り込む新しいデータ獲得モードを提案し、通常モードと比べて約30倍の高速での走査を実現するなど、ナノプローブ系をより便利に使えるツールとすることにも取り組んでいます。

また、導電性探針を利用したAFMでは、試料−探針間に電圧を印加した際に生じる静電引力を計測でき、この静電引力信号を元にして試料表面近傍の空乏化現象や表面電位分布等の観測が可能となることから、特に、異なる周波数を持った交流電圧を複数同時に印加して静電引力の高次周波数成分を抽出することによって、空乏化現象の詳細な検討を可能にする新規手法の開発などを進めています。

■ カーボンナノチューブFETチャネルの動作解析

カーボンナノチューブ(CNT)は、理想的には純粋な一次元伝導体となるため、CNTを電界効果トランジスタ(FET)のチャネルとすることで高い性能が実現される可能性があります。高速動作が期待されるマルチチャネル型CNTFETにおいては、現在、CNTチャネルごとの特性のばらつき具合の解明が一つの課題となっています。当研究室では、高空間分解能を有する磁場センサである磁気力顕微鏡(MFM)による電流誘起磁場の観測を通じて電流を定量評価する手法を開発しており、その手法を適用することで、複数のCNTチャネルから任意の一本を選択して、その動作を解析することに成功しています。

■ 量子ナノ構造の物性解明

独自に開発した光照射STM法を利用して、単一のInAs細線構造における光吸収特性などの光学的物性を解析しています。また、AFMによる静電引力検出法やその静電引力を利用した表面電位計測手法(KFM)について、測定精度や確度を向上させるために、静電引力に対する感度が向上するサンプリング法や、電位決定の空間分解能が向上する間欠バイアス法を提案して、世界トップレベルの空間分解能を達成した上で、単一のInAs量子ドットへの電荷蓄積効果などの検証を進めています。