量子ナノサイエンスとその応用
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(9) 産業と技術革新の基盤をつくろう
研究室概要
ナノメートル寸法の構造(ナノ量子系)の中では、電子の軌道や電荷、スピンなどの物理量が量子化されており、それにより様々な新しい物理現象を発現します。平川研究室では、このような“量子半導体”の中で現れる新規な物理現象を発見・解明するとともに、それらを制御することによりエレクトロニクスに新しい展開をもたらすことを目標に研究を行っています。
- 担当教員 / 研究室
- 平川 一彦
■THz領域における量子ナノ構造の電子物性とデバイス応用:
半導体中の多くの物理量は、THz/fs領域に包含され、量子ナノ構造中の物性の解明には、電子とTHz領域の電磁波との相互作用を調べることが極めて有効です。我々は、THz分光法により、量子ナノ構造中の電子状態や伝導機構の解明を行っています。これにより、トランジスタの動作限界の解明やブロッホ発振器のダイナミクスの研究を行っています。さらに、分子線エピタキシー技術を駆使して、新しいTHz発振素子や超高感度光検出技術の開拓を行っています。
■単一分子トランジスタ実現に向けたナノ技術・ナノ科学:
単一の分子は機能を発現する最小単位としてデバイスへの応用が議論されてきましたが、近年ようやく原子レベルで制御された精密な加工や精密な計測が可能になってきました。我々は、単一分子にアクセスするための1 nm以下のギャップを有する金属電極の作製技術の確立や単一分子素子のTHzダイナミクスの研究などを通して、分子機能素子や量子情報処理技術への応用の可能性の探索を行っています。
■MEMSを用いた高速・高感度テラヘルツ検出器の開発:
基礎科学、医学、薬学や安全・安心分野など様々な分野で注目されているテラヘルツ技術を普及させるためには、極低温への冷却を必要としない高感度かつ高速のテラヘルツ検出技術の開発は必要不可欠です。我々は半導体技術を用いて作製される微小機械構造(MEMS)の両持ち梁構造を用いて、テラヘルツ入射光で誘起される発熱によるわずかな温度上昇を、MEMS両持ち梁構造の共振周波数のシフトとして高感度に読み取ることを原理とする非冷却・高感度・高速なテラヘルツ検出器を開発しています。
■半導体量子構造を用いた高効率熱電子放出冷却素子:現代のLSIや光エレクトロニクスは、素子の高密度集積化と高速動作を達成することにより大きな発展を遂げてきました。しかし、同時に素子の内部で発生する熱が、素子の動作や信頼性に大きな影響を与えはじめており、エレクトロニクスの発展を大きく阻んでいます。従って、素子の高効率な冷却技術は、将来のエレクトロニクスの発展の鍵を握る技術と言っても過言ではありません。
我々は、半導体薄膜構造におけるトンネル効果と熱電子放出効果をうまく用いて、高効率に電子を冷却する熱電子放出冷却構造の研究を行っています。